「マーケティングファネル」という言葉を聞いたことはありますか?なんだか難しそう…と感じるかもしれませんが、これは顧客が商品やサービスを知ってから購入に至るまでの流れを理解し、より効果的なアプローチをするための重要な考え方です。
この記事では、「ファネルってそもそも何?」という基本から、具体的な種類、作り方まで、専門用語をできるだけ使わずに、順を追って丁寧に解説していきます。顧客の気持ちに寄り添ったマーケティング戦略を立てるヒントがきっと見つかるはずです。
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そもそもマーケティングのファネルとは?
マーケティングにおける「ファネル」とは、顧客が商品やサービスを認知してから購入・利用に至るまでのプロセスを、「漏斗(ろうと、じょうご)」の形に例えたものです。漏斗が上部が広く、下にいくほど狭くなっていくように、最初は多くの人が商品やサービスを知るものの、興味を持ち、比較検討し、最終的に購入する人は段階的に少なくなっていく、という顧客の流れを図式化した考え方(フレームワーク)と言えます。
このファネルという考え方がなぜ重要なのでしょうか?それは、顧客の一連の行動や心理の変化を「見える化」できる点にあります。
- 顧客の行動を理解できる: どんなきっかけで商品を知り、どういう情報を求めて、何が決め手で購入するのか、といった一連の流れを把握しやすくなります。
- 課題を発見しやすくなる: 例えば、「サイトへのアクセスは多いのに、問い合わせが少ない」場合、ファネルの「興味・関心」から「比較・検討」へ進む段階に何か問題があるのでは?と推測できます。
- 効果的な対策を立てられる: 顧客がどの段階にいるかに合わせて、最適な情報提供やアプローチ方法を考えられるようになります。
例えば、ある調査では、ウェブサイトを訪れた人のうち、実際に商品を購入する割合は数パーセント程度と言われています。多くの潜在顧客が途中で離脱してしまうのです。ファネルを使って、どの段階で離脱が多いのかを把握することが、無駄のない効率的なマーケティング活動の第一歩となります。
ファネルの代表的なステージについて
マーケティングファネルは、顧客の行動や心理の変化に合わせて、いくつかの「ステージ(段階)」に分けて考えられます。このステージの分け方には様々なモデルがありますが、ここでは一般的で理解しやすい代表的なステージをご紹介します。顧客が各ステージでどのような状態にあるのかを知ることが、適切なアプローチの鍵となります。
- ステージ1:認知 (Awareness)
顧客が商品やサービスの存在、あるいは自身の課題に気づく最初の段階です。「こんな商品があるんだ」「こんなことで困っていたかも」と認識するイメージです。- 例:SNS広告で新しい健康食品を見かける、友人の話で便利なアプリを知る。
- 企業側の動き:まずは広く知ってもらうため、広告、SNS発信、メディア掲載などで露出を高めます。
- ステージ2:興味・関心 (Interest)
認知した商品やサービスについて、「これは自分に関係がありそうだ」「もっと詳しく知りたい」と興味を持つ段階です。自ら情報を探し始めることもあります。- 例:健康食品の効果についてウェブサイトで調べる、アプリの機能紹介ページを読む。
- 企業側の動き:興味を深めてもらうため、ブログ記事、導入事例、詳しい資料(ホワイトペーパー)などを提供します。
- ステージ3:比較・検討 (Consideration)
購入を具体的に考え始め、類似の商品やサービスと比較検討する段階です。「どちらが良いだろうか?」「自分に合っているのは?」と考えます。- 例:複数の健康食品の成分や価格を比較する、類似アプリのレビューや評価を見る。
- 企業側の動き:自社製品の優位性や価値を伝えるため、他社比較資料、無料体験、デモンストレーションなどを提供します。
- ステージ4:行動・購入 (Conversion)
比較検討の結果、「これが欲しい」「利用しよう」と意思決定し、実際に購入や申し込みといった行動を起こす段階です。- 例:健康食品をオンラインストアで購入する、アプリをダウンロードして会員登録する。
- 企業側の動き:スムーズに行動できるよう、わかりやすい購入ボタン、簡単な申し込みフォーム、限定オファーなどを用意します。
これらのステージを意識することで、顧客の気持ちの変化に合わせたコミュニケーションが可能になります。
目的別マーケティングファネルの種類

基本的なファネルの考え方を理解した上で、さらに様々な種類のファネルモデルが存在することを知っておくと、より自社の目的に合った戦略を立てやすくなります。ここでは代表的なファネルの種類とその特徴を見ていきましょう。
- パーチェスファネル (Purchase Funnel)
最も古典的で基本的なモデルです。上記で説明した「認知」から「購入」までの一連の流れを示します。顧客が商品を知り、最終的に購入するまでのプロセスをシンプルに捉えたい場合に有効です。まずはこの基本形を理解することが重要です。 - インフルエンサーファネル (Influencer Funnel)
パーチェスファネルをベースに、購入後の「継続(リピート購入)」や「推奨(口コミ、紹介)」といった段階を加えたモデルです。現代では、新規顧客獲得と同じくらい、既存顧客との良好な関係維持(LTV: 顧客生涯価値の向上)が重視されるため、この購入後のステージに注目が集まっています。- 例:サブスクリプションサービスで、解約率を下げ、長く利用してもらうための施策を考える際に使われます。
- ダブルファネル (Double Funnel)
BtoB(企業向けビジネス)マーケティングでよく用いられるモデルです。前半は新規顧客を獲得するまでの「マーケティングファネル」、後半は獲得した顧客を育成し、優良顧客へと育てていく「セールスファネル(またはカスタマーサクセスファネル)」の2つを組み合わせた考え方です。- 例:ソフトウェア企業が、まず無料トライアルでリードを獲得し(マーケティング)、その後営業担当がフォローして有料契約に繋げ、さらに活用支援で上位プランへの移行を促す(セールス/サクセス)といった流れを設計します。
- AISAS (アイサス) モデル
インターネットが普及した現代の消費者の行動プロセスに着目した日本発のモデルです。Attention(注意)→ Interest(関心)→ Search(検索)→ Action(行動)→ Share(共有)の頭文字を取っています。特に「検索」と「共有(口コミなど)」が重視されている点が特徴です。- 例:SNSで見かけた商品(Attention/Interest)を、レビューサイトで検索し(Search)、購入(Action)した後、自身のSNSで感想を共有(Share)する、といった行動パターンを分析するのに役立ちます。
どのモデルが絶対的に正しいというわけではなく、自社の商材やターゲット顧客、ビジネスモデルに合わせて最適なファネルの考え方を取り入れることが大切です。
実践!マーケティングファネルの作り方
ファネルの概念や種類を理解したら、いよいよ自社のマーケティング戦略に落とし込む段階です。難しく考えず、以下のステップで進めてみましょう。ここでは、地域密着型のカフェが「新規の常連客を増やす」ことを目指す場合を例に説明します。
- ターゲット顧客(ペルソナ)の明確化: どんな人に顧客になってほしいのか、具体的な人物像(ペルソナ)を描きます。年齢、性別、職業、ライフスタイル、悩みなどを詳細に設定します。
- 例:「近隣に住む30代のフリーランス女性。落ち着いた空間で仕事や読書をしたいと考えている。SNSでカフェ情報をよくチェックする。」
- カスタマージャーニーの設計: 設定したペルソナが、あなたの商品やサービスをどのように知り、興味を持ち、最終的に購入(来店)し、常連になるまでの道のり(カスタマージャーニー)を、ファネルの各ステージに当てはめて考えます。
- 例:[認知]地域の情報サイトやSNSでカフェを発見 → [興味・関心]カフェのウェブサイトやSNSで雰囲気やメニューを確認 → [比較・検討]他のカフェと比較、口コミをチェック → [行動(来店)]実際にカフェを訪れる → [継続(常連化)]居心地が良く、ポイントカードなどを利用して再来店する。
- 各ステージの目標(KPI)と施策の決定: 各ステージで達成したい具体的な目標(KPI:重要業績評価指標)と、そのための施策を考えます。
- 例:
- [認知] KPI: ウェブサイトへのアクセス数増 / 施策: 地域情報サイトへの掲載依頼、SNS広告
- [興味・関心] KPI: SNSフォロワー数増 / 施策: 魅力的な写真やメニュー情報をSNSで発信、ブログ更新
- [比較・検討] KPI: 口コミサイトでの高評価獲得 / 施策: 来店客へのレビュー投稿依頼
- [行動(来店)] KPI: 新規来店客数 / 施策: 初回限定クーポン配布
- [継続(常連化)] KPI: 再来店率 / 施策: ポイントカード導入、限定イベント開催
- 例:
- 効果測定と改善: 実行した施策が、設定したKPIに対してどれくらいの効果があったかを測定・分析します。Google Analyticsなどのツールを活用すると良いでしょう。効果の薄い施策は見直し、効果の高い施策は継続・強化するなど、常に改善(PDCAサイクル)を意識します。
- 例:「SNS広告からのウェブサイトアクセスは多いが、実際の来店に繋がっていない」→ 広告内容やウェブサイトの改善を検討。
ファネル作りは一度で完成するものではありません。顧客の反応を見ながら、柔軟に見直し、育てていくことが成功の鍵です。
まとめ:戦略的なアプローチで成果を最大化
この記事では、マーケティングの基本的な考え方である「ファネル」について、その意味から代表的なステージ、種類、そして実践的な作り方までを解説してきました。
ファネルの考え方を導入することで、これまで感覚的に行っていたかもしれないマーケティング活動を、顧客の行動に基づいた戦略的なアプローチへと転換できます。各ステージで最適な施策を実行し、効果を測定・改善していくことで、課題を早期に発見し、より効率的に成果を最大化することが可能になります。ぜひ、あなたのビジネスにもマーケティングファネルの考え方を取り入れてみてください。