普段、私たちがパソコンやスマートフォンでWebサイトを見るとき、www.google.com
や www.yahoo.co.jp
のような「ドメイン名」と呼ばれる文字列をアドレスバーに入力しますよね。しかし、インターネットの世界でコンピューター同士が通信する際には、実はこの「名前」ではなく、「IPアドレス」という数字の羅列(例: 172.217.25.227
)を使っています。では、なぜ私たちは名前を入力するだけで、目的のWebサイトにたどり着けるのでしょうか?
その裏側で活躍しているのが、今回解説する「DNS(ディーエヌエス)」という仕組みです。DNSは、インターネットを使う上で空気のように当たり前に存在していますが、非常に重要な役割を担っています。この記事では、「DNSって一体何?」という疑問に、初心者の方にも分かりやすく、その仕組みと重要性を解説していきます。
Contents
DNSとは?一言でいうと「インターネット上の電話帳(住所録)」
DNSとは、「Domain Name System(ドメイン・ネーム・システム)」の略称です。その役割を一言で、そして非常に分かりやすく例えるなら、「インターネットの世界全体の巨大な電話帳」あるいは「住所録」です。
考えてみてください。友達に電話をかけるとき、相手の電話番号(例: 090-xxxx-xxxx
)を直接覚えていますか? ほとんどの場合、スマートフォンの連絡先に「〇〇さん」という名前で登録しておき、その名前を選んで電話をかけますよね。名前と電話番号を結びつけてくれているのが、スマートフォンの電話帳機能です。
DNSは、これと全く同じような働きをインターネット規模で行っています。
- ドメイン名 (Domain Name): 私たち人間が覚えやすく、使いやすいWebサイトの「名前」(例:
www.google.com
)。これは電話帳の「氏名」にあたります。 - IPアドレス (IP Address): インターネット上のコンピューター(Webサーバーなど)が持つ、数字で表された固有の「住所」または「電話番号」(例:
172.217.25.227
)。これが電話帳の「電話番号」や「住所」にあたります。
私たちがブラウザにドメイン名を入力すると、DNSが「この名前(ドメイン名)のコンピューターの住所(IPアドレス)は、この番号ですよ」と調べて教えてくれるのです。この「名前(ドメイン名)を数字(IPアドレス)に変換する」プロセスを「名前解決(Name Resolution)」と呼びます。
もしDNSという仕組みがなければ、私たちはGoogleにアクセスするために「172.217.25.227
」のような数字の羅列を覚え、直接入力しなければなりません。世界中に存在する無数のWebサイトすべてのIPアドレスを覚えるのは、現実的ではありませんよね。DNSがあるおかげで、私たちは覚えやすいドメイン名を使うだけで、目的のWebサイトに簡単にアクセスできるのです。まさに、DNSはインターネットを人間にとって使いやすいものにしてくれている、重要な基盤技術と言えます。
Webサイトが表示されるまでのDNSの簡単な流れ【4ステップで理解】
では、私たちがブラウザにドメイン名を入力してから、実際にWebサイトが表示されるまでの間に、DNSは具体的にどのように働いているのでしょうか? その裏側の複雑な仕組みは専門的になりますが、ここでは簡単な4つのステップに分けて、その流れをイメージしてみましょう。「インターネットの電話帳」の例えを使うと分かりやすいです。
ステップ①:あなたがブラウザに「ドメイン名」を入力する
- あなたがパソコンやスマホのブラウザのアドレスバーに、見たいWebサイトのドメイン名(例:
www.example.jp
)を入力し、Enterキーを押します。 - 例え: あなたが友達の「鈴木さん」に電話をかけようと思い、スマホの連絡先で「鈴木さん」を探すようなものです。
ステップ②:パソコンやスマホが、近くの「DNSサーバー(電話帳係)」に問い合わせる
- あなたのパソコンやスマホは、まず身近なDNSサーバー(通常は契約しているインターネットサービスプロバイダ(ISP)が提供しているものや、Google Public DNS (
8.8.8.8
) のような公共DNSサーバー)に、「www.example.jp
さんのIPアドレス(電話番号)は何番ですか?」と問い合わせます。この問い合わせ役のDNSサーバーを「DNSリゾルバ」や「キャッシュDNSサーバー」と呼びます。 - 例え: あなたがスマホの連絡先アプリ(DNSリゾルバ)に「鈴木さんの電話番号を教えて」と頼むようなものです。
ステップ③:DNSサーバーがIPアドレスを調べて教えてくれる
- 問い合わせを受けたDNSサーバー(リゾルバ)は、自分がその答えを知っていれば(以前調べて覚えていれば=キャッシュ)、すぐに答えます。知らなければ、他のDNSサーバーに聞き合わせながら、
www.example.jp
のIPアドレス(電話番号)を探し出し、あなたのパソコンやスマホに「はい、192.0.2.1
ですよ」と教えてくれます。- (※実際には、リゾルバは、ドメイン名を管理している階層構造(ルートDNSサーバー→トップレベルドメインDNSサーバー→権威DNSサーバー)を辿って、目的のIPアドレスを突き止めます。この部分は「電話帳係が、中央の巨大な名簿センターに問い合わせて調べてくれる」くらいのイメージで大丈夫です。)
- 例え: 連絡先アプリが、もし番号を知らなければ、電話会社のデータベース(他のDNSサーバー)に問い合わせて「鈴木さんの番号は
090-xxxx-xxxx
です」と調べてきてくれるようなものです。
ステップ④:ブラウザが、教えてもらったIPアドレスを使って目的のWebサイトに接続する
- IPアドレス(電話番号)を受け取ったあなたのブラウザは、そのIPアドレスを宛先として、
www.example.jp
のWebサイトが置かれているコンピューター(Webサーバー)に「ページを見せてください」とリクエストを送ります。 - Webサーバーが応答し、Webページのデータが送られてきて、あなたのブラウザに表示されます。
- 例え: 電話番号が分かったので、実際にその番号に電話をかけ、鈴木さんと話ができる(Webサイトが表示される)ようなものです。
このように、私たちがドメイン名を入力するだけでWebサイトが表示される裏側では、DNSが瞬時に「名前」から「住所(IPアドレス)」を調べるという、重要な翻訳作業を行ってくれているのです。
DNSの仕組みを支える主な登場人物(簡単に紹介)

DNSの仕組みを理解するために、この「名前解決」のプロセスに関わる主な登場人物(構成要素)をもう少しだけ知っておきましょう。難しい言葉もありますが、「こういう役割のものがあるんだな」という程度で大丈夫です。
- ドメイン名 (Domain Name):
- 私たち人間がWebサイトを識別するために使う、分かりやすい「名前」です。
- 例:
www.google.com
,example.co.jp
など。 - ピリオド(
.
)で区切られた階層構造になっています。(例:.jp
は日本の国別トップレベルドメイン、.co
は企業などの組織、example
はその組織の名前) - 例え: 「山田 太郎」さんのような「氏名」や、「〇〇株式会社」のような「会社名」。
- IPアドレス (IP Address):
- インターネット上のコンピューターやネットワーク機器に割り当てられる、数字で表された「住所」です。コンピューター同士が通信相手を特定するために使います。
- 例:
192.0.2.1
(これはIPv4という形式の例) - 最近では、インターネットに接続する機器の増加に対応するため、より多くの住所を割り当てられるIPv6という新しい形式(例:
2001:db8::1
)も普及が進んでいます。 - 例え: 「03-xxxx-xxxx」のような「電話番号」や、「東京都新宿区〇〇1-2-3」のような「住所」。
- DNSサーバー (DNS Server / ネームサーバー):
- ドメイン名とIPアドレスの対応情報(「電話帳」のデータ)を管理し、問い合わせに応じてIPアドレスを教える役割を持つサーバーコンピューターの総称です。世界中に多数存在し、連携して動作しています。
- DNSリゾルバ (DNS Resolver / キャッシュDNSサーバー):
- 私たちのパソコンやスマホから最初に問い合わせを受けるサーバー。「電話帳係」や「受付窓口」のような存在。問い合わせ結果を一時的に記憶(キャッシュ)して、次回同じ問い合わせがあった時に素早く応答する機能も持ちます。通常は契約しているプロバイダ(ISP)や、Google Public DNS (
8.8.8.8
)、Cloudflare (1.1.1.1
)などがこれにあたります。
- 私たちのパソコンやスマホから最初に問い合わせを受けるサーバー。「電話帳係」や「受付窓口」のような存在。問い合わせ結果を一時的に記憶(キャッシュ)して、次回同じ問い合わせがあった時に素早く応答する機能も持ちます。通常は契約しているプロバイダ(ISP)や、Google Public DNS (
- 権威DNSサーバー (Authoritative DNS Server):
- 特定のドメイン(例:
example.jp
)に関する「公式な」情報(IPアドレスなど)を持っているサーバー。「そのドメインの管理者」や「本家の電話帳」のような存在です。DNSリゾルバは、最終的にこのサーバーに問い合わせて正確な情報を得ます。
- 特定のドメイン(例:
これらの登場人物が連携することで、世界中のドメイン名に対するIPアドレスの問い合わせ(名前解決)がスムーズに行われているのです。
まとめ:DNSはインターネットをスムーズに繋ぐ「縁の下の力持ち」
今回は、インターネットの基本的な仕組みの一つである「DNS(ドメインネームシステム)」について、初心者の方にも分かりやすく解説しました。
普段インターネットを使っているときには、その存在を意識することはほとんどないかもしれません。しかし、DNSは、私たちが快適かつスムーズにWebサイトを閲覧したり、メールを送受信したりといった、あらゆるインターネット上の活動を陰で支えている、まさに「縁の下の力持ち」です。もし「DNSサーバーが見つかりません」といったエラーに遭遇したら、それはこの「電話帳」の仕組みが一時的にうまく機能していないサインかもしれません。
この記事を通じて、DNSというインターネットの基本的な仕組みへの理解が少しでも深まり、より安心してインターネットを利用できるようになれば幸いです。