「プログラミング不要で、誰でも簡単に、しかも無料でホームページが作れる」―― そんな魅力的なキャッチフレーズで世界的に人気のホームページ作成ツール「Wix(ウィックス)」。ドラッグ&ドロップの直感的な操作で、本格的なデザインのサイトが作れる手軽さから、個人事業主や中小企業、クリエイターなど、多くのユーザーに支持されています。しかしその一方で、インターネット上では「Wixはやめた方がいい」「Wix おすすめしない」といった、少しネガティブな意見や評判を目にすることも少なくありません。
果たして、Wixにはどのようなメリットがあり、そして「おすすめしない」と言われるほどのデメリットや注意点があるのでしょうか? この記事では、現在のWixについて、その魅力と、見過ごされがちなデメリットやリスクを正直に比較・検証し、あなたがWixを選ぶべきかどうかの判断材料を提供します。
Contents
まずは確認、Wixとはどんなサービス?
本題に入る前に、Wixがどのようなサービスで、なぜこれほどまでに人気を集めているのか、その基本的な魅力(メリットの概要)を簡単におさらいしておきましょう。
Wixは、イスラエル発のクラウド型ホームページ作成プラットフォームです。最大の特徴は、HTMLやCSSといった専門的なコーディング知識が一切不要で、マウスのドラッグ&ドロップ操作(掴んで、好きな場所に置く操作)を中心とした、非常に直感的で視覚的なエディタ(編集画面)を使って、Webサイトをまるでパワーポイントで資料を作るような感覚で作成できる点にあります。
多くのユーザーに支持される主な理由は、以下の点が挙げられます。
- 圧倒的な簡単さ: とにかく操作が分かりやすく、Web制作の知識がない初心者でもすぐに使い始められます。
- 豊富なデザインテンプレート: 様々な業種や目的に合わせた、プロがデザインしたような高品質なテンプレートが多数用意されており、デザインセンスに自信がなくても安心です。
- デザインの自由度: ドラッグ&ドロップでテキストや画像をミリ単位で自由に配置できるため、オリジナリティの高いデザインを実現しやすい側面もあります。(ただし、これがデメリットに繋がる場合も後述します)
- オールインワンの手軽さ: Webサイトの作成ツールだけでなく、Webサイトを公開するためのサーバー(ホスティング)もセットで提供されるため、別途サーバーを契約する必要がありません(無料プラン・有料プランあり)。
- 機能拡張性(Wix App Market): 予約システム、ネットショップ機能、問い合わせフォーム、SNS連携など、様々な追加機能を「アプリ」として簡単に追加できます。
これらの手軽さやデザイン性の高さから、Wixは世界中で2億人以上とも言われるユーザーを獲得し、特に専門知識や予算が限られるスモールビジネスや個人のサイト作成において、非常に人気の高い選択肢となっています。しかし、この手軽さの裏には、注意すべき点も存在します。
Wixを「おすすめしない」と言われる理由・デメリット5選
多くのメリットがある一方で、Wixには「おすすめしない」「やめた方がいい」という声が上がる理由となる、いくつかの重要なデメリットや注意点が存在します。導入を検討する上で、これらを十分に理解しておくことが後悔しないための鍵となります。
- 理由①:SEOに関する懸念・制約
過去、WixはSEO(検索エンジン最適化:Googleなどで上位表示させるための施策)に弱いと言われてきました。その理由として、特殊なURL構造やページの表示速度などが挙げられていました。現在では、Wix側もSEO機能を大幅に改善しており、タイトルタグやメタディスクリプションの設定、代替テキストの追加、構造化データマークアップ支援、ブログ機能、常時SSL化対応など、基本的なSEO対策は問題なく行えるようになっています。「Wix SEO Wiz」といったサポートツールも提供されています。 しかし、WordPressなどの他のプラットフォームと比較した場合、依然として以下のような制約や懸念が指摘されることがあります。- ページの表示速度: デザインの自由度が高い反面、サイト構造が複雑になったり、多くの機能(アプリ)を追加したりすると、ページの読み込み速度が遅くなる傾向があり、これがGoogleの評価(Core Web Vitalsなど)に影響する可能性があります。
- より高度な技術的SEOの限界: サーバー側の細かい設定変更や、非常に高度な構造化マークアップの実装など、専門家が行うような「攻めた」SEO対策においては、プラットフォームの制約から限界がある場合があります。 基本的なSEOは可能ですが、「SEOで絶対に勝ちたい」「非常に競争の激しい分野で上位を目指したい」という場合には、懸念材料となる可能性があります。
- 理由②:一度選んだテンプレートは変更できない
これはWixの非常に大きな制約の一つです。Wixでは、サイト作成時に最初に選んだデザインテンプレートを、後から別のテンプレートに変更することができません。「サイトのデザインをリニューアルしたい」と思ったら、基本的には新しいテンプレートを選んで、コンテンツを移し替えながら一からサイトを作り直す必要が出てきます。これは、特に長期間サイトを運営していく上で、デザインのトレンド変化に対応したり、事業内容の変化に合わせてサイト構成を見直したりする際に、大きな手間とコストがかかるリスクとなります。 - 理由③:プラットフォームへの依存とデータ移行の難しさ
Wixは「クローズドな独自プラットフォーム」です。つまり、Wixで作ったサイトは、Wixのサーバー上でしか動作しません。将来的に、「もっと高機能なサイトにしたいからWordPressに移行したい」「Wixの料金プランが変わって割高になったから他のサービスに移りたい」と思っても、Wixで作成したサイトのデザインや機能をそのまま他のプラットフォームに移行することは、基本的に不可能です。テキストや画像データなどを手動で移行することはできても、サイト構造やデザインは再構築する必要があります。これは「プラットフォームロックイン」と呼ばれ、一度Wixを選ぶと、他の選択肢への乗り換えが非常に困難になるという、長期的な視点での大きなデメリットです。 - 理由④:ページの表示速度の問題(再掲・重要)
理由①のSEOでも触れましたが、表示速度はユーザー体験にも直結するため、改めてデメリットとして挙げられます。Wixのドラッグ&ドロップエディタは自由度が高い反面、生成されるHTMLコードが複雑になったり、多くのJavaScriptが読み込まれたりして、ページの表示速度が遅くなることがあります。特に、多くの画像や動画、アプリを使用すると顕著になる場合があります。ページの表示速度はユーザーの離脱率に影響するため、無視できない問題です。Wix側もパフォーマンス改善に取り組んでいますが、WordPressなどで最適化されたサイトと比較すると、不利になるケースがあることは否めません。 - 理由⑤:無料プランの制限とトータルコスト
「無料でホームページが作れる」というイメージがあるWixですが、無料プランにはいくつかの大きな制限があります。- Wixの広告が表示される: サイト上部にWixの宣伝バナーが表示されます。
- 独自ドメインが使えない: URLが
ユーザー名.wixsite.com/サイト名
のような形式になり、独自ドメイン(example.com
など)は使えません。 - ストレージ容量や帯域幅(データ転送量)の制限: 小規模です。
- ネットショップ機能などが使えない。 ビジネス用途で本格的に利用するには、これらの制限がない有料プランへの加入が実質的に必須となります。有料プランは月額料金がかかり、さらに高機能なアプリ(予約機能、会員機能など)を利用する場合は、別途月額料金が必要になることもあります。「思ったより費用がかさんだ」という声も聞かれるため、トータルコストを事前に把握しておく必要があります。
メリットも再確認!それでもWixを選ぶ利点とは?
ここまでWixのデメリットや「おすすめしない」理由を中心に見てきましたが、もちろんWixにはそれを補って余りあるメリットも存在します。デメリットを理解した上で、改めてWixを選ぶ利点を確認しましょう。
- メリット1:【やはり圧倒的】専門知識不要の簡単な操作性
何度か触れていますが、これが最大の強みです。HTMLやCSSといったコーディングの知識が全くなくても、マウス操作(ドラッグ&ドロップ)だけで、見たまま編集(WYSIWYG)が可能です。パソコンの基本的な操作ができれば、誰でも短時間で見栄えの良いページを作成できます。とにかく「簡単さ」「手軽さ」を最優先するならば、Wixは非常に優れた選択肢です。 - メリット2:【デザイン豊富】多数のテンプレートと高いデザイン自由度
業種や目的に合わせたプロ品質のデザインテンプレートが非常に豊富に用意されています。これらのテンプレートをベースにすれば、デザインセンスに自信がない方でも、おしゃれなサイトを簡単に作れます。また、エディタの自由度が高いため、テンプレートをベースにしながらも、細部の配置やデザインを視覚的に、かなり自由に変更できる点も魅力です。(ただし、自由度が高すぎることが、逆にデザインの統一感を損なう原因にもなり得るので注意は必要です。) - メリット3:【手軽さ】サーバー契約不要、オールインワンですぐ始められる
通常、ホームページを作るには、作成ツールとは別に、ドメイン(住所)を取得し、サーバー(土地)をレンタルする必要があります。Wixは、サイト作成エディタとホスティング(サーバー機能)が一体となっているため、Wixのアカウントを作成すれば、すぐにサイト制作を始め、公開することができます(無料プランでも公開可能)。サーバー管理やセキュリティアップデートなどもWix側が行ってくれるため、技術的なことを考えずに済みます。 - メリット4:【機能拡張】豊富なアプリ(Wix App Market)で機能追加が可能
Wixには「Wix App Market」という、スマートフォンのアプリストアのような仕組みがあります。ここには、ネットショップ機能、予約システム、問い合わせフォーム、イベントカレンダー、SNS連携、マーケティングツールなど、様々な機能を追加できるアプリが多数用意されています。多くはクリック操作だけで簡単に追加できるため、専門知識がなくてもサイトの機能を拡張できます。(ただし、高機能なアプリには有料のものも多いです。) - メリット5:【AI機能】サイト自動生成(ADI)など最新技術の導入
WixはAI技術の導入にも積極的です。Wix ADI (Artificial Design Intelligence) という機能を使えば、いくつかの質問に答えるだけで、AIが業種や好みに合わせてサイトのデザインと初期コンテンツを自動で作成してくれます。また、文章作成や画像編集を支援するAIツールも搭載されており、コンテンツ作成の手間を軽減する助けとなります。
【結論】Wixが向いていない人 vs おすすめできる人

さて、メリットとデメリットを踏まえた上で、結局のところ、Wixはどのような人に向いていて、どのような人には向いていない(おすすめしない)のでしょうか?
Wixが向いていない(おすすめしない)ケース
- SEOに非常にこだわり、高度な施策を自ら行いたい人/企業: より深いレベルでの技術的SEOや、コンテンツSEO戦略を徹底的に追求したい場合、Wixのプラットフォーム上の制約が足かせになる可能性があります。
- 将来的に他のプラットフォーム(WordPressなど)への移行を考えている人/企業: Wixからのサイト移転は非常に困難です。長期的な視点でプラットフォームの自由度やデータの所有権を重視する場合は、避けた方が賢明です。
- 完全オリジナルのデザインや、複雑な独自機能を実装したいWebデザイナー/開発者: Wixのカスタマイズ性には限界があり、サーバーサイドのプログラミングなど、深いレベルでの改変はできません。
- 大規模で高機能なECサイト(ネットショップ)を構築・運営したい場合: 小規模なショップは可能ですが、商品数が非常に多い、あるいは特殊な販売方法やシステム連携が必要な大規模ECには、ShopifyやEC-CUBE、WordPress+WooCommerceなどの専門プラットフォームの方が適している場合が多いです。
- サーバーやデータベースを自分で管理・最適化したい技術者: Wixはクローズドな環境であり、サーバーへの自由なアクセスはできません。
逆にWixがおすすめできるケース
- Webサイト制作の知識や経験が全くない、完全な初心者の方: 難しいことを考えずに、とにかく早く、簡単に見栄えの良いサイトを作りたい場合に最適です。
- 視覚的な操作(ドラッグ&ドロップ)で自由にデザインしたい方: コーディング不要で、見たまま編集できる点を重視する方。
- 小規模なビジネスオーナー、個人事業主、フリーランス、アーティストの方: ポートフォリオサイト、店舗紹介サイト、簡単なサービス紹介サイトなど、比較的シンプルな構成で、素早く立ち上げたい場合に有効です。
- 情報更新の頻度がそれほど高くないサイト: 頻繁なブログ更新などがない、コーポレートサイトやLP(ランディングページ)など。
- サーバー管理などの技術的な手間を避けたい方: オールインワンで手軽に始めたい方。
重要なのは、Wixのメリットとデメリット(特にテンプレート変更不可、移行困難性などの制約)をしっかり理解した上で、ご自身の目的、スキル、予算、そして将来的な計画に合っているかどうかを判断することです。
まとめ:Wixのメリット・デメリットを正しく理解し、後悔しない選択をしよう
今回は、人気のホームページ作成ツール「Wix」について、そのメリットだけでなく、「おすすめしない」と言われる理由となっているデメリットや注意点、そしてどのような場合にWixが適しているのか(あるいは適していないのか)を詳しく解説しました。
「簡単に始められる」というメリットは非常に大きいですが、長期的な視点で見ると、デメリットや制約が後々問題になる可能性も否定できません。特に、テンプレート変更不可とプラットフォーム移行の困難さは、将来的な「後悔」に繋がりやすいポイントです。
ホームページ作成ツールを選ぶ際は、Wixのメリットだけに目を向けるのではなく、デメリットや制約もしっかりと理解した上で、WordPressなどの他の選択肢とも比較検討し、ご自身の状況にとって本当に最適なツールかどうかを慎重に判断することが、後悔しないための最も重要なステップと言えるでしょう。この記事が、あなたの賢明な選択の一助となれば幸いです。