ブログ ビジネススキル

定量分析と定性分析の違いとは?意味から目的までわかりやすく解説

定量分析と定性分析の違いとは?意味から目的までわかりやすく解説

アンケート調査の結果をまとめたり、顧客の意見を分析したりする際に、「定量分析」や「定性分析」という言葉を耳にすることがあります。「どちらも分析なのは分かるけど、一体何が違うの?」「どんな時にどっちを使えばいいの?」と、その違いや使い分けに迷う方も多いのではないでしょうか。実は、この二つの分析方法は、扱うデータの種類、分析の目的、そして得られる結果が大きく異なります。それぞれの特徴を正しく理解し、目的に合わせて適切に使い分けることが、より深く、そして正確な洞察を得るための鍵となります。

この記事では、定量分析と定性分析それぞれの基本的な意味から、両者の明確な違い、メリット・デメリット、そして効果的な使い分けや組み合わせ方まで、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。

定量分析とは?数値データで「量」や「割合」を測る分析

まず、「定量分析(ていりょうぶんせき)」について見ていきましょう。定量分析とは、その名の通り、調査や実験などによって得られた「数量」に関するデータ、つまり「数値データ」を用いて、物事の量や割合、傾向などを客観的に把握・分析する手法です。「何人が『はい』と答えたか」「平均いくら購入したか」「何パーセントが満足しているか」といった、「量」に関する問いに答えることを得意とします。

【定量分析で扱うデータの例】

定量分析で扱うのは、基本的に数値として測定・集計できるデータです。

  • アンケート調査の選択式回答: 「はい/いいえ」の回答数、5段階評価の平均点、年代別の回答者数など。
  • Webサイトのアクセスデータ: 訪問者数、ページビュー数、滞在時間、直帰率など。
  • 購買データ: 売上金額、購入個数、購入者数、リピート率など。
  • 実験データ: 特定の条件下での測定値、反応時間など。
  • センサーデータ: 温度、湿度、位置情報などの数値データ。

【定量分析の主な目的】

定量分析は、以下のような目的で用いられることが多いです。

  • 全体像の把握: 市場規模、顧客層の割合、満足度の全体的な傾向などを数値で把握する。
  • 仮説の検証: 「〇〇という施策は、売上向上に効果があるはずだ」といった仮説が、統計的に正しいかどうかを検証する。
  • 効果測定: 実施したマーケティング施策などが、目標とする数値(KPI)に対してどれくらいの効果があったかを測定する。
  • 傾向やパターンの発見: 大量のデータの中から、統計的な手法を用いて規則性や関連性を見つけ出す。
  • 将来予測: 過去のデータパターンに基づき、将来の売上などを予測する。

【定量分析の手法】

主に統計学的な手法が用いられます。単純な集計(度数分布、割合算出)やクロス集計(例:年代別×満足度)から、平均値、中央値、標準偏差といった基本的な統計量の算出、さらには相関分析、回帰分析といった、より高度な統計解析まで、目的に応じて様々な手法が使われます。結果はグラフや表で視覚的に表現されることが多いです。

【例え】

定量分析は、健康診断における「身長測定、体重測定、血圧測定、血液検査の数値」のようなものとイメージすると分かりやすいでしょう。客観的な「数値」によって、体の状態(全体像や傾向)を把握することができます。

定性分析とは?言葉や行動から「質」や「理由」を探る分析

次に、「定性分析(ていせいぶんせき)」について見ていきましょう。定性分析は、定量分析とは対照的に、数値では表せない「質」的なデータ、例えば人々の言葉、行動、意見、感情、経験といったものを対象とし、その背景にある「なぜ?」「どのように?」といった理由や意味、文脈を深く理解しようとする分析手法です。「なぜそう感じたのか」「具体的にどのような点が問題なのか」「どのようなプロセスで意思決定したのか」といった、「質」や「深層心理」に関する問いを探求することを得意とします。

【定性分析で扱うデータの例】

定性分析で扱うのは、主に言葉や観察記録などの非数値データです。

  • インタビューの発言録: 顧客や専門家へのインタビューで得られた詳細な語り。
  • アンケートの自由記述回答: 「ご意見・ご感想」欄などに書かれた自由な文章。
  • 行動観察の記録: ユーザーが実際に製品を使っている様子を観察した記録やメモ。
  • グループインタビュー(フォーカスグループ)の発言録: 特定のテーマについて複数人で話し合った内容。
  • SNSの投稿、レビューサイトの口コミ: ユーザーの自発的な意見や感想。
  • 写真、動画、日記、エスノグラフィ(民族誌)記録 など。

【定性分析の主な目的】

定性分析は、以下のような目的で用いられることが多いです。

  • 理由・背景の深掘り: なぜ顧客はそのような行動をとったのか、なぜそのように感じているのか、その根本的な理由や背景を探る。
  • 仮説の生成: 新しい商品やサービスのアイデア、あるいは定量調査で検証すべき仮説を発見する。
  • 個別の事例の深い理解: 特定の顧客セグメントや、特徴的な事例について、その詳細な状況や文脈を深く理解する。
  • 潜在的なニーズや未充足な欲求の探索: 顧客自身も明確に意識していないような、隠れたニーズや不満を発見する。
  • 概念や体験の構造を明らかにする: ある事象(例:顧客満足、ブランドイメージなど)がどのような要素で構成されているかを明らかにする。

【定性分析の手法】

収集した言葉や観察記録などのデータを、注意深く読み込み、解釈し、そこに共通するパターンやテーマ、キーワードを見つけ出していく作業が中心となります。KJ法、コーディング、内容分析、テキストマイニング(ツール利用)などの手法が用いられます。分析者の解釈や洞察力が重要となる側面もあります。

【例え】

定性分析は、健康診断後の「医師による問診」や「生活習慣に関するカウンセリング」のようなものとイメージできます。測定された数値(定量データ)だけでは分からない、「なぜその数値になったのか」「普段どんな生活を送っているのか」「どんなことに困っているのか」といった、背景にあるストーリーや理由、感情を深く聞き取り、理解しようとするアプローチです。

【徹底比較】定量分析と定性分析の決定的な違いとは?

【徹底比較】定量分析と定性分析の決定的な違いとは?

ここまで見てきたように、定量分析と定性分析は、目的も扱データも分析方法も大きく異なります。その決定的な違いを、いくつかの比較ポイントで整理してみましょう。

  • 違い①:扱うデータの種類
    • 定量分析: 数値データ(人数、金額、評価点、割合、アクセス数など)。客観的に測定・集計できるもの。
    • 定性分析: 非数値データ(言葉、文章、観察記録、画像、動画など)。意味や文脈を含む質的な情報。
  • 違い②:分析の主な目的
    • 定量分析: 全体像の把握、傾向の数値化、仮説の検証、効果測定など。「どのくらい」「何割」を知りたい。
    • 定性分析: 理由・背景の深掘り、仮説の生成、個別理解、潜在ニーズ探索など。「なぜ」「どのように」を知りたい。
  • 違い③:分析のアプローチ
    • 定量分析: 客観的・統計的アプローチ。数値データに基づき、統計手法を用いて分析し、客観的な結論を導き出すことを目指す。
    • 定性分析: 主観的・解釈的アプローチ。言葉や行動の背後にある意味や文脈を、分析者が解釈しながら理解を深めていく。
  • 違い④:得意な問いの種類
    • 定量分析: 「何人が〇〇と回答したか?」「どのくらいの割合が満足しているか?」「AとBではどちらの効果が高いか?」
    • 定性分析: 「なぜ顧客は満足/不満なのか?」「どのように製品を選んだのか?」「どんな点に課題を感じているか?」
  • 違い⑤:適したサンプルサイズ(対象者の数)
    • 定量分析: 結果を一般化したり、統計的な有意性を示したりするために、比較的大規模なサンプル数(数十〜数千人以上)が必要となることが多い。
    • 定性分析: 一人ひとりから深い情報を得るため、比較的小規模なサンプル数(数人〜数十人程度)で行われることが多い。
  • 違い⑥:アウトプット(分析結果)の形式
    • 定量分析: グラフ、表、統計的な数値(平均値、パーセンテージ、相関係数など)が中心。
    • 定性分析: インタビュー記録からの抜粋(発言録)、キーワードの抽出、テーマやパターンの記述、概念図、ケース記述などが中心。

【比較表:定量分析 vs 定性分析 まとめ】

比較項目定量分析定性分析
主な目的全体像把握、仮説検証、効果測定理由・背景の深掘り、仮説生成、個別理解
扱うデータ数値データ(量、割合、頻度など)非数値データ(言葉、行動、観察記録など)
問いの種類「どのくらい?」「何割?」「なぜ?」「どのように?」「どんな?」
アプローチ客観的、統計的主観的、解釈的
サンプルサイズ大規模(数十〜数千人以上)小規模(数人〜数十人程度)
分析手法例集計、統計解析インタビュー分析、内容分析、テキストマイニング
アウトプット例グラフ、表、統計値発言録、キーワード、テーマ記述、概念図、ケース記述

このように、両者は全く異なる性質を持つ分析手法であることを理解することが重要です。

それぞれのメリット・デメリットを知ろう

定量分析と定性分析には、それぞれ得意なこと(メリット)と不得意なこと(デメリット)があります。どちらか一方が優れているというわけではなく、その特性を理解した上で使い分けることが大切です。

【定量分析のメリット・デメリット】

  • メリット(長所):
    • 客観性と説得力: 分析結果が数値で示されるため、客観性が高く、他の人に説明する際の説得力が増します。(例:「満足度は平均4.5点です」)
    • 全体像の把握: 大規模なデータを扱うことで、市場や顧客全体の傾向や構造を把握しやすいです。(例:「20代女性の利用率が最も高い」)
    • 比較・検証が容易: 数値データなので、グループ間の比較(例:男女間の満足度の差)や、施策前後の効果比較などが統計的に行いやすいです。
    • 一般化の可能性: 適切なサンプリングが行われていれば、調査結果を母集団全体に一般化できる可能性があります。
  • デメリット(短所):
    • 「なぜ?」が分からない: 数値の背景にある理由や個別の事情、感情といった深い情報は得られません。(例:「満足度が低い」ことは分かっても、「なぜ低いのか」は分からない)
    • 表面的な理解に留まる可能性: アンケートの選択肢など、あらかじめ用意された枠組みの中での回答しか得られず、想定外の意見や潜在的なニーズを見逃す可能性があります。
    • 数値化できないものは扱えない: 感情の機微や微妙なニュアンス、非言語的な情報などを捉えるのは苦手です。

【定性分析のメリット・デメリット】

  • メリット(長所):
    • 理由や背景の深い理解: 顧客の本音や、行動の裏にある動機、具体的な経験などを深く掘り下げて理解することができます。(例:「なぜこの商品を選んだのですか?」という問いへの詳細な回答)
    • 新しい発見や仮説生成: 予期せぬ意見や潜在的なニーズ、これまで気づかなかった課題など、新しい発見や次の調査・開発に繋がる仮説が得られやすいです。
    • 文脈の理解: 特定の状況や文脈の中での行動や意見を理解するのに適しています。
    • 柔軟性: 調査を進めながら、質問内容を柔軟に変更したり、深掘りしたりすることが可能です。
  • デメリット(短所):
    • 主観が入りやすい: データの解釈に分析者の主観が影響する可能性があり、客観性の担保が難しい場合があります。
    • 一般化が難しい: 対象者数が少ないことが多いため、得られた結果を市場全体の意見として一般化することは困難です。(例:5人のインタビュー結果が、1000人全員に当てはまるとは言えない)
    • 時間とコスト: インタビューや観察、記録の分析には多くの時間と手間(コスト)がかかることがあります。
    • 分析スキルが必要: 発言の意図を正確に読み取ったり、膨大なテキストデータから意味のあるパターンを見つけ出したりするには、一定の分析スキルや経験が求められます。

定量分析と定性分析、どう使い分ける?組み合わせるメリットは?

定量分析と定性分析、どう使い分ける?組み合わせるメリットは?

定量分析と定性分析、それぞれのメリット・デメリットを理解した上で、どのように使い分ければ良いのでしょうか? 最も重要なのは、「分析の目的」に合わせて適切な手法を選択することです。

  • 定量分析が適している主な場面:
    • 市場規模やシェア、認知度など、全体の「量」を把握したいとき
    • 特定の仮説(例:「価格を下げれば売上が上がるはず」)が正しいか検証したいとき
    • Webサイトのリニューアル前後など、施策の効果を「数値」で測定したいとき
    • 顧客満足度などを定期的に測定し、時系列での変化を見たいとき
    • 多数の回答者から、特定の質問に対する回答分布を知りたいとき
  • 定性分析が適している主な場面:
    • 顧客が製品を購入する「理由」や、サービスに不満を持つ「背景」を深く知りたいとき
    • 新しい商品やサービスの「アイデア」を発見したいとき
    • まだよく分かっていない市場や顧客層について、探索的に理解を深めたいとき
    • 特定のユーザー層(例:ヘビーユーザー)の具体的な利用実態やニーズを詳しく知りたいとき
    • 定量調査を行う前の「仮説構築」や、調査票の質問項目作成のヒントを得たいとき

そして、多くの場合、定量分析と定性分析は、どちらか一方だけを行うよりも、両方を組み合わせることで、より深く、より多角的な理解を得ることができます。これを「混合研究法(ミックスメソッド)」と呼びます。

【組み合わせ方の例】

  • ① 定性 → 定量: まずインタビュー(定性)で顧客のニーズや課題に関する仮説を立て、その仮説が市場全体にどれくらい当てはまるかをアンケート調査(定量)で検証する。
  • ② 定量 → 定性: まずアンケート調査(定量)で全体の傾向(例:満足度が低い層がいる)を把握し、その理由や背景をインタビュー(定性)で詳しく深掘りする。
  • ③ 定量 + 定性(並行): アンケート調査(定量)の中に自由記述欄(定性)を設けて、数値データと合わせて分析する。

【具体的な活用シーン例】

  • 新商品開発: 定性調査(グループインタビューなど)でターゲット顧客の潜在ニーズを探り、アイデアを出す → 定量調査(コンセプト調査アンケート)で、どのアイデアが市場に受け入れられそうか検証する。
  • Webサイト改善: アクセス解析(定量)で離脱率が高いページを特定する → ユーザーテストやインタビュー(定性)で、なぜそのページで離脱するのか原因を探る。
  • 顧客満足度調査: アンケート(定量)で満足度スコアを測定し、自由記述欄(定性)やインタビュー(定性)で、満足/不満の具体的な理由を聞き取る。

このように、定量分析と定性分析は対立するものではなく、互いの弱点を補い合い、相乗効果を生み出すことができる関係にあるのです。目的に応じて適切に使い分け、必要に応じて組み合わせることが、より良い分析結果に繋がります。

まとめ:違いを理解し、目的に応じて賢く使いこなそう

今回は、ビジネスやリサーチの現場でよく使われる「定量分析」と「定性分析」について、それぞれの基本的な意味、決定的な違い、メリット・デメリット、そして使い分けや組み合わせ方までを解説しました。

「データ分析」と聞くと、難しい数式や統計処理(定量分析)をイメージする方もいるかもしれませんが、顧客の声に耳を傾け、その背景にある想いを理解しようとすること(定性分析)も、同じように価値のある重要な分析です。

定量分析と定性分析は、いわば物事を理解するための「二つのレンズ」のようなものです。数字というレンズで全体を俯瞰し、言葉というレンズで細部や深層を覗き込む。この二つのレンズを使いこなすことで、私たちはビジネスや社会の複雑な事象をより正確に捉え、より良い意思決定を行うことができるようになるでしょう。ぜひ、それぞれの特徴を理解し、あなたの目的に合わせて賢く活用してみてください。

  • この記事を書いた人

田中諒

10年以上に渡りSEOを生業としてきました。2019年からフリーランスとして活動開始中。編集者・コンテンツディレクターとしても活動しており、多くのWeb媒体でコンテンツ制作に関わる。

-ブログ, ビジネススキル