「自分のWebサイト、読み込みに時間がかかって表示が遅い…」「訪問者がすぐに離れてしまっている気がする…」そんな「サイトが重い」という悩みは、Webサイト運営者にとって非常によくある、そして深刻な問題です。サイトの表示速度は、訪問者の満足度だけでなく、Googleなどの検索エンジンからの評価、ひいてはビジネスの成果にも直接影響を与えます。しかし、サイトが重くなる原因は一つではなく、画像、サーバー、プログラムなど様々です。原因を特定しないまま闇雲に対策しても、効果は期待できません。
この記事では、あなたのサイトが重い原因を突き止め、改善への第一歩を踏み出すために、まずは表示速度の重要性を確認し、次に現状を把握するための必須チェックツール、考えられる主な原因、そして具体的なチェック手順について、初心者の方にも分かりやすく解説していきます。
Contents
なぜサイト表示速度が重要?「重い」がもたらす悪影響
Webサイトの表示速度、つまり「ページの読み込みがどれだけ速いか」は、単に「待たされるのが嫌だ」という感覚的な問題だけではありません。ビジネスの成果にも直結する、非常に重要な要素なのです。サイトが重い(表示速度が遅い)ことによる主な悪影響を見ていきましょう。
- ユーザー体験(UX)の悪化と離脱率の増加
インターネットユーザーは非常にせっかちです。ページの読み込みに数秒以上かかると、多くのユーザーはイライラし、ページが完全に表示される前に「戻る」ボタンを押してしまいます(離脱)。せっかく興味を持ってアクセスしてくれた訪問者を、入り口で逃してしまっているのです。Googleの調査などでも、表示速度が1秒遅れるごとに、コンバージョン率(成果達成率)が数パーセント低下したり、直帰率(1ページだけ見て離脱する割合)が大幅に上昇したりすることが示唆されています。遅いサイトは、単純にユーザーにとってストレスであり、サイトやブランドに対する悪い印象を与えかねません。 - SEO(検索エンジン評価)への悪影響
Googleは、ユーザーにとって使いやすいWebサイトを高く評価する傾向にあり、ページの表示速度を検索順位決定要因の一つとして公式に採用しています。特に近年重視されているのが「Core Web Vitals(コアウェブバイタル)」という、実際のユーザー体験に基づいた指標群です。 - コンバージョン率(成約率)の低下
最終的な目標である商品購入、問い合わせ、会員登録といったコンバージョン(成果)にも、表示速度は直接影響します。ページの読み込みが遅いと、ユーザーは購入プロセスやフォーム入力の途中で諦めて離脱してしまう可能性が高まります。ECサイトなどでは、表示速度が1秒改善するだけで売上が数パーセント向上したという事例も報告されています。
このように、サイトの表示速度は、ユーザーを引きつけ、満足させ、最終的な成果に繋げるための、まさに生命線とも言える要素なのです。
まずは現状把握!サイトの重さをチェックする必須ツール3選
「自分のサイトが重い気がする」と感じたら、まずは客観的なデータで現状を把握することが大切です。ここでは、誰でも無料で(または一部無料で)利用できる、サイトの表示速度をチェックするための必須ツールを3つご紹介します。
- ツール①:Google PageSpeed Insights (PSI)
- 概要: Googleが提供する、Webページの表示速度とユーザー体験を分析するための公式ツールです。モバイルとデスクトップ、それぞれの環境でのパフォーマンスを評価してくれます。
- 使い方: 使い方は非常に簡単。PSIのサイトにアクセスし、測定したいページのURLを入力して「分析」ボタンをクリックするだけです。
- 見るべきポイント:
- パフォーマンススコア (0-100点): サイトの全体的な速度評価。点数が低いほど改善が必要です。
- Core Web Vitals (LCP, INP/FID, CLS): 各指標の具体的な測定値と、「良好」「改善が必要」「不良」の評価が表示されます。SEOへの影響も考えると、ここは特に重要です。
- 改善できる項目: 「サーバーの応答時間(TTFB)の短縮」「レンダリングを妨げるリソースの除外」「適切なサイズの画像」など、具体的な改善提案が表示されます。これが原因特定の大きなヒントになります。
- 診断: パフォーマンスに影響を与える可能性のある、その他の問題点が表示されます。
- ツール②:ブラウザのデベロッパーツール
- 概要: Google ChromeやFirefox、Microsoft Edgeなどの主要なWebブラウザに標準で搭載されている開発者向け機能です。Webページの裏側の詳細な情報を確認できます。
- 使い方(Chromeの場合): ページ上で右クリックし「検証」を選択するか、F12キー(Macの場合はOption+Command+I)を押すと起動します。
- 見るべきポイント:
- 「Network」タブ: ページを読み込む際にダウンロードされる全てのファイル(HTML, CSS, JS, 画像など)の一覧、それぞれのファイルサイズ、読み込みにかかった時間などが「ウォーターフォール」と呼ばれるグラフと共に表示されます。特にサイズの大きいファイルや、読み込みに時間がかかっているファイルを特定するのに役立ちます。
- 「Lighthouse」タブ(Chromeの場合): PageSpeed Insightsと同様のパフォーマンス分析をブラウザ上で実行できます。
- ツール③:GTmetrixなどの外部測定ツール
- 概要: PageSpeed Insightsと同様に、Webサイトのパフォーマンスを測定・分析してくれるサードパーティ製のツールです。GTmetrixやPingdom Toolsなどが有名です。
- 特徴: PSIとは異なる評価基準や指標を提供したり、世界中の様々な場所からのアクセス速度を測定できたり、過去の測定結果との比較ができたり(有料プランの場合)と、より多角的な分析が可能です。無料でも基本的な測定は行えます。
- 活用法: PSIと併用することで、より詳細な原因分析や改善効果の確認に役立ちます。
これらのツールを使いこなすことで、「なんとなく重い」という感覚的な問題から、「具体的にどの部分が、どのくらい遅いのか」という客観的なデータに基づいた問題把握へと進むことができます。測定は一度だけでなく、複数回行ったり、トップページ以外の主要なページ(商品ページやブログ記事など)も測定したりすることをおすすめします。
サイトが重くなる主な原因【10項目チェックリスト】

Webサイトの表示速度測定ツールで現状を把握したら、次はその「重さ」を引き起こしている具体的な原因を探っていきます。サイトが重くなる原因は様々ですが、ここでは特に多く見られる主な原因を10項目、チェックリスト形式でご紹介します。あなたのサイトがどれに当てはまるか、考えてみましょう。
サイトが重くなる原因チェックリスト
- □ 画像データが最適化されていない
- ファイルサイズが大きすぎる(数MBなど)画像が多数使われている。
- 表示サイズに対して、元画像の寸法(ピクセル数)が大きすぎる。
- WebPやAVIFといった、より軽量な次世代画像フォーマットを使用していない。
- → 最もよくある原因の一つです!
- □ JavaScriptやCSSのファイルサイズ・読み込み方が適切でない
- JavaScriptファイルやCSSファイルが圧縮(Minify)されておらず、サイズが大きい。
- 多数のJS/CSSファイルを個別に読み込んでいるため、サーバーへのリクエスト回数が多い。
- ページの表示に必要なCSSや、後で実行しても問題ないJavaScriptが、ページの初期読み込みを妨げる(レンダリングブロック)形で読み込まれている。
- □ サーバーの応答速度(TTFB)が遅い
- ユーザーがアクセスしてから、サーバーが最初の1バイトを返すまでの時間(Time To First Byte)が長い。これはサーバー自体の性能や設定、あるいはWebアプリケーション(WordPressなど)の処理に時間がかかっていることを示します。
- □ 利用しているホスティング(サーバー)環境の性能が低い
- 特に安価な共用サーバープランなどでは、CPUやメモリといったサーバーリソースが限られており、アクセスが増えたり、サイトの処理が重くなったりすると、応答速度が著しく低下することがあります。
- □ データベース処理に時間がかかっている(動的サイトの場合)
- WordPressなどの動的サイトでは、ページを表示する際にデータベースへの問い合わせ(クエリ)が発生します。このクエリが非効率だったり、頻繁に発生したりすると、表示速度の低下に繋がります。
- □ WordPress等のCMS本体、テーマ、プラグインに問題がある
- CMS(WordPress、Joomla、Drupalなど)本体や、使用しているテーマ、プラグインが古いバージョンのままになっている。
- インストールしているプラグインの数が多すぎる。
- 特定のプラグインやテーマが、リソースを大量に消費したり、他のプラグインと競合したりしている。
- □ 外部スクリプトの読み込みが遅い、または多すぎる
- Web広告の表示タグ、アクセス解析ツール(Google Analyticsなど)、SNSのシェアボタン、埋め込み動画(YouTubeなど)といった、外部のサーバーから読み込むスクリプトが多いと、それらの読み込み完了を待つために全体の表示が遅れることがあります。
- □ Webフォントの読み込み方が最適でない
- デザイン性の高いWebフォントを多用している、ファイルサイズが大きい、読み込み方法が非効率(例:CSSの@importを使うなど)だと、テキストが表示されるまでに時間がかかることがあります。
- □ キャッシュが適切に設定・活用されていない
- ブラウザキャッシュ(一度読み込んだ画像をPC/スマホに保存する)やサーバーキャッシュ(動的に生成したページを一時保存する)が利用されていないと、毎回全てのデータをダウンロード・生成する必要があり、表示が遅くなります。
- □ 不要なリダイレクト(ページの転送)が多い
- ページA→ページB→ページCのように、複数回の転送(リダイレクト)が発生していると、最終的なページが表示されるまでに余計な時間がかかります。
これらの項目を参考に、PageSpeed Insightsなどのツールが出力した改善提案と照らし合わせながら、あなたのサイトの「重さ」の原因となっている可能性のある箇所を絞り込んでいきましょう。
【実践】原因を特定するための具体的なチェック手順
主な原因の候補が挙がったら、次はツールを使いながら、より具体的に原因を特定していく手順に移ります。ここでは、特に重要なポイントに絞って、具体的なチェック手順の例をご紹介します。
- チェック1:画像が原因か?
- ツール: PageSpeed Insights (PSI), ブラウザのデベロッパーツール(Networkタブ)
- 確認方法:
- PSIの「改善できる項目」で、「適切なサイズの画像」「効率的な画像フォーマット」「オフスクリーン画像の遅延読み込み」などの指摘がないか確認します。
- デベロッパーツールの「Network」タブを開き、ページを再読み込みします。「Img」フィルターで画像ファイルのみを表示させ、「Size」列でファイルサイズが大きいもの(目安として100KBを超えるもの)、「Time」列で読み込みに時間がかかっているものを特定します。
- 特定した画像の表示サイズと実際の画像寸法を比較し、必要以上に大きくないか確認します。
- オンラインの画像圧縮チェックツールなどで、さらに圧縮できる余地がないか試してみます。
- チェック2:JavaScript/CSSが原因か?
- ツール: PSI, デベロッパーツール(Networkタブ, Lighthouseタブ)
- 確認方法:
- PSIの「改善できる項目」で、「レンダリングを妨げるリソースの除外」「使用していない JavaScript の削除」「使用していない CSS の削除」「JavaScript の最小化」「CSS の最小化」などの指摘がないか確認します。
- デベロッパーツールの「Network」タブで、JSファイルやCSSファイルのサイズと読み込み時間を確認します。特に
</head>
タグより前で読み込まれている大きなJSファイルは要注意です。 - Lighthouseタブ(Chrome)でパフォーマンス監査を実行し、JavaScriptの実行時間などに関する指摘を確認します。
- チェック3:サーバー応答速度(TTFB)が原因か?
- ツール: PSI, GTmetrix, KeyCDN Speed TestなどのTTFB測定ツール
- 確認方法:
- PSIの「診断」項目にある「サーバー応答時間(TTFB)の短縮」の評価を確認します。ここが「遅い」と判定されている場合はサーバー側に問題がある可能性が高いです。
- GTmetrixや他のTTFB測定ツールで、複数の地域からのTTFBを計測してみます。一般的に200ms〜500ms程度が目安とされますが、 consistently これを大幅に超える場合は、ホスティング環境やサーバーサイドの処理を見直す必要があります。
- チェック4:WordPressプラグインが原因か?(WordPressの場合)
- ツール: 表示速度測定ツール, WordPress管理画面
- 確認方法:
- まず、現在の表示速度を測定しておきます。
- WordPressの管理画面から、全てのプラグインを一旦停止します。
- 再度、表示速度を測定し、大幅に改善されていれば、プラグインのいずれかが原因である可能性が高いです。
- プラグインを一つずつ有効化していき、その都度速度を測定します。速度が著しく低下したプラグインが、重さの原因となっている可能性が高いです。(影響の大きいプラグインを特定するための「Query Monitor」などのプラグインもありますが、少し専門的になります)
- チェック5:キャッシュ設定は有効か?
- ツール: デベロッパーツール(Networkタブ), PSI
- 確認方法:
- デベロッパーツールの「Network」タブで、画像やCSS、JSファイルを選択し、「Headers」タブ内の
Cache-Control
やExpires
といったレスポンスヘッダーを確認します。適切なキャッシュ期間が設定されているか(例:max-age=...
が大きい値になっているか)を見ます。 - PSIの「診断」項目で、「静的なアセットと効率的なキャッシュポリシーの配信」に関する指摘がないか確認します。
- WordPressの場合は、キャッシュ系プラグイン(例: WP Super Cache, W3 Total Cacheなど)の設定画面で、キャッシュ機能が有効になっているか、適切に設定されているかを確認します。
- デベロッパーツールの「Network」タブで、画像やCSS、JSファイルを選択し、「Headers」タブ内の
これらのチェックを丁寧に行うことで、あなたのサイトが重い具体的な原因を絞り込むことができるでしょう。
原因を特定したら? 次のステップ(改善の方向性)

サイトが重い原因を特定できたら、いよいよ改善へのステップです。原因ごとに、取るべき対策の方向性は異なります。ここでは、主な原因に対する改善策の基本的な方向性を簡単にご紹介します。(具体的な方法は、原因やサイトの状況によって多岐にわたるため、ここでは概要に留めます)
- 原因が「画像」の場合:
- 画像圧縮: 画像編集ソフトやオンラインの画像圧縮ツール、WordPressプラグインなどを使い、画質を大きく損なわずにファイルサイズを小さくします。
- 適切なサイズ調整: Webページで表示されるサイズに合わせて、あらかじめ画像をリサイズしておきます。
- 次世代フォーマットの利用: JPEGやPNGの代わりに、より圧縮率の高いWebP(ウェッピー)やAVIF(アビフ)形式への変換を検討します。
- 遅延読み込み(Lazy Loading): 画面に表示されるタイミングまで画像の読み込みを遅らせる技術を導入します。
- 原因が「JavaScript/CSS」の場合:
- 圧縮(Minify): コード中の不要な空白、改行、コメントなどを削除してファイルサイズを小さくします。
- 結合: 複数のCSSファイルやJSファイルを一つにまとめることで、サーバーへのリクエスト回数を減らします。
- 非同期読み込み(Defer/Async): ページの表示を妨げないように、重要でないJavaScriptファイルの読み込みを後回しにします。
- 不要なコードの削除: 使われていないCSSやJavaScriptのコードを削除します。
- 原因が「サーバー応答速度(TTFB)」の場合:
- ホスティングプランのアップグレード: より高性能なCPUやメモリを持つプラン、あるいは共用サーバーからVPS(仮想専用サーバー)や専用サーバーへの移行を検討します。
- ホスティング会社の変更: 現在のホスティング会社のサーバー性能やネットワーク環境に問題がある場合、より評判の良い会社への移転も選択肢です。
- サーバー設定の最適化: PHPのバージョンアップ、データベースのチューニングなど、サーバー側の設定を見直します(専門知識が必要な場合あり)。
- CDN(コンテンツデリバリネットワーク)の利用: 世界中のサーバーにサイトのコピーを配置し、ユーザーに最も近いサーバーからコンテンツを配信することで表示を高速化します。
- 原因が「WordPressのプラグイン/テーマ」の場合:
- 不要なプラグインの停止・削除: 使っていないプラグインや、機能が重複しているプラグインを整理します。
- 軽量な代替プラグインへの変更: 重い処理を行うプラグインを、より動作が軽い代替プラグインに乗り換えます。
- テーマの見直し: 高機能すぎるテーマや、コード品質の低いテーマはサイトを重くする原因になります。軽量で最適化されたテーマへの変更を検討します。
- 定期的なアップデート: WordPress本体、テーマ、プラグインを常に最新の状態に保つことも重要です。
- 原因が「キャッシュ」の場合:
- ブラウザキャッシュの設定:
.htaccess
ファイルなどで、画像やCSS、JSファイルのキャッシュ有効期限を適切に設定します。 - サーバーサイドキャッシュの導入: WordPressならキャッシュ系プラグインを導入・設定します。サーバー側でキャッシュ機能が提供されている場合は、それを有効にします。
- ブラウザキャッシュの設定:
原因を特定したら、まずは改善によるインパクトが大きい箇所から優先的に対策を進めるのが効果的です。PageSpeed Insightsなどのツールは、改善効果の見積もりも示してくれることが多いので参考にしましょう。また、改善策を実施したら、必ず再度速度を測定し、効果を確認することが大切です。もし自力での改善が難しい場合は、Web制作会社や専門家への相談も検討しましょう。
まとめ:サイトが重い原因を改善し表示速度への道筋をつけよう
Webサイトの表示速度が遅い、つまり「サイトが重い」という問題は、見た目の問題だけでなく、ユーザーの満足度(UX)、検索エンジン評価(SEO)、そして最終的なビジネス成果(コンバージョン)にまで悪影響を及ぼす、非常に重要な課題です。
サイトが重い原因は多岐にわたるため、やみくもに対策するのではなく、まずはツールを使って客観的に現状を把握し、チェックリストを参考に原因のあたりをつけ、一つ一つ丁寧に検証していくという、体系的なアプローチが不可欠です。
表示速度の改善は、一度行えば終わりというものではなく、サイトを運営していく中で継続的に意識していくべきものです。しかし、その第一歩は、「なぜ重いのか?」という原因を正しく突き止めることにあります。
ぜひ、この記事で紹介したツールやチェック方法を活用して、あなたのサイトが重い原因を特定し、具体的な表示速度改善への道筋をつけてください。より速く、より快適なWebサイトは、訪問者にとっても、検索エンジンにとっても、そしてあなたのビジネスにとっても、必ずプラスになるはずです。