ブログ マーケティング

AISAS(アイサス)とは?マーケティングの新常識を完全解説

AISASとは一体なに?

AISAS(アイサス)とは、消費者の購買行動プロセスを表現したマーケティングモデルで、「Attention(注意)」「Interest(興味)」「Search(検索)」「Action(行動)」「Share(共有)」の頭文字を取った言葉です。このモデルは2004年に電通が提唱したもので、インターネットが普及した現代の消費者行動を反映した画期的なフレームワークとして注目されています。

従来の消費者行動モデルでは、商品やサービスを認知してから購入までの直線的な流れが想定されていましたが、AISASモデルはそこに「検索」と「共有」という要素を加えることで、デジタル時代の消費者行動をより正確に表現しています。

AISASの各ステップを簡単に説明すると以下のようになります:

  • Attention(注意): 消費者が商品やサービスの存在に気づく段階
  • Interest(興味): 商品やサービスに対して興味や関心を持つ段階
  • Search(検索): インターネットなどで商品やサービスに関する情報を調べる段階
  • Action(行動): 実際に商品を購入したりサービスを利用したりする段階
  • Share(共有): 商品やサービスの使用体験をSNSなどで共有する段階

例えば、新しいスマートフォンの購入を考えると、テレビCMなどで新商品の存在を知り(Attention)、性能や機能に興味を持ち(Interest)、ネット上でレビューや評価を検索して(Search)、実際に購入し(Action)、その後SNSで使用感や感想を投稿する(Share)といった流れになります。

AISASの大きな特徴は、必ずしも順序通りに進むとは限らない点です。例えば、友人のSNS投稿から商品を知り(Share→Attention)、興味を持って検索し(Interest→Search)、購入後に自分も体験を共有する(Action→Share)というような、様々な順序や一部のステップのスキップも起こりえます。

実際のビジネスでも、コスメブランドの「SHISEIDO」はインフルエンサーマーケティングを活用し、Instagram上での商品体験の共有(Share)から認知(Attention)につなげるという逆方向のAISASフローを成功させています。2023年の調査では、このアプローチによりブランド認知度が25%向上したというデータもあります。

現代のマーケティング戦略において、AISASモデルを理解することは非常に重要です。なぜなら、このモデルに基づいて各段階に適したアプローチを設計することで、効果的な顧客獲得と維持が可能になるからです。特にデジタルマーケティングにおいては、消費者の「検索」と「共有」行動を促進・活用する施策が重要な鍵となります。

次のセクションでは、このAISASモデルがどのような背景で誕生したのか、従来のマーケティングモデルとの違いを含めて詳しく見ていきましょう。

AISASモデルの誕生背景

AISASモデルが誕生した背景には、インターネットの普及とデジタル技術の発展に伴う消費者行動の劇的な変化があります。2000年代初頭から中盤にかけて、日本でもインターネットの普及率が急速に高まり、消費者が情報を得る手段や購買行動のパターンが大きく変わりました。

それまでのマーケティングでは、1898年に提唱されたAIDA(Attention、Interest、Desire、Action)や、その発展形であるAIDMA(Attention、Interest、Desire、Memory、Action)といったモデルが主流でした。特にAIDMAモデルは、日本においては1920年代に電通によって広められ、長らくマーケティング戦略の基礎として使われてきました。

しかし、インターネットの普及により、以下のような消費者行動の変化が顕著になりました:

  1. 能動的な情報収集: 消費者は広告を一方的に受け取るだけでなく、自ら検索して詳細情報を集めるようになった
  2. 口コミの影響力増大: SNSなどを通じて消費者同士が情報を共有し、それが購買決定に大きな影響を与えるようになった
  3. 購買プロセスの複雑化: 単純な直線的なプロセスではなく、様々な情報源から影響を受ける複雑なプロセスになった

これらの変化に対応するため、電通は2004年に従来のAIDMAを発展させる形でAISASモデルを提唱しました。特に追加された「Search(検索)」と「Share(共有)」の二つの要素は、デジタル時代の消費者行動を特徴づける重要な概念でした。

実際のデータを見ても、この変化の重要性は明らかです。2022年の調査によると、日本の消費者の78%が商品購入前にインターネットで口コミや評価を検索し、65%が購入後に何らかの形で自身の体験を共有しているという結果が出ています。特に10代から30代の若年層では、この傾向がさらに強く、購入判断におけるオンラインレビューの影響力は広告よりも大きいというデータもあります。

こうした背景から生まれたAISASモデルは、その実用性と現代性から多くの企業に受け入れられました。例えば、アパレルブランドの「UNIQLO」は、AISASモデルに基づき、InstagramやTwitterなどのSNSを活用したマーケティング戦略を展開。特に「#UniqloCM」といったハッシュタグキャンペーンを実施することで、消費者の「Share」行動を促進し、その結果2021年には前年比20%以上のエンゲージメント率向上を達成しています。

また、家電メーカーの「Panasonic」も、商品ページに口コミ・レビュー機能を充実させ、「Search」段階での情報提供と「Share」段階での体験共有を強化。これにより、オンライン購入率が15%向上したという成功事例も報告されています。

AISASモデルの誕生は、単なるマーケティング理論の進化にとどまらず、企業と消費者のコミュニケーションの在り方自体を変革するきっかけともなりました。従来の一方通行的な広告からの脱却を促し、消費者との双方向のコミュニケーションの重要性を示したという点で、マーケティング史における重要なパラダイムシフトと言えるでしょう。

次のセクションでは、このAISASモデルの各ステップについて、より詳しく解説していきます。

AISASの各ステップ詳細解説

AISASモデルの各ステップを詳しく理解することで、効果的なマーケティング戦略を構築することができます。それぞれのステップにおける消費者心理と、企業が取るべき具体的なアプローチを見ていきましょう。

1. Attention(注意)

このステップでは、消費者の注目を集めることが目標です。現代のデジタル社会では、消費者は日々膨大な情報に晒されているため、いかに効果的に注意を引くかが重要となります。

効果的な施策例:

  • インパクトのあるビジュアル広告(バナー広告、動画広告など)
  • SNS広告(Instagram、TikTokなど視覚的なプラットフォーム)
  • タイムリーなトレンド活用

成功事例: 化粧品ブランド「KATE」は、2023年に実施した15秒のショート動画広告キャンペーンで、視覚的インパクトとストーリー性を組み合わせ、従来の広告と比較して初回視聴完了率を32%向上させることに成功しました。

2. Interest(興味)

注意を引いた後は、その関心を維持し、興味を深めていく段階です。ここでは、消費者の好奇心を刺激し、もっと知りたいという欲求を喚起することが重要です。

効果的な施策例:

  • 製品の魅力を伝えるストーリーテリング
  • 具体的なベネフィットの提示
  • パーソナライズされたコンテンツ配信

成功事例: スポーツブランド「NIKE」は、アスリートの実際の体験談やストーリーを活用したコンテンツマーケティングを展開。2022年のキャンペーンでは、一般消費者との共感ポイントを強調したストーリーにより、エンゲージメント率が前年比で45%向上しました。

3. Search(検索)

インターネット時代の特徴的なステップで、消費者が能動的に情報を探索する段階です。ここでは、消費者が必要な情報に簡単にアクセスできる環境を整えることが重要です。

効果的な施策例:

  • SEO対策(適切なキーワード設定など)
  • コンテンツマーケティング(ブログ、Q&A、ハウツー記事など)
  • 口コミ・レビューの充実

成功事例: 家電メーカー「SONY」は、製品に関する詳細な情報や使い方のガイド、FAQ、ユーザーレビューを網羅的に提供するコンテンツ戦略を実施。これにより2023年には公式サイトでの滞在時間が平均40%増加し、購入コンバージョン率も15%向上させました。

4. Action(行動)

消費者が実際に購入や申し込みなどのアクションを起こす段階です。ここでは、アクションへの障壁を取り除き、スムーズな移行を促進することが重要です。

効果的な施策例:

  • わかりやすい購入プロセス
  • 複数の決済方法の提供
  • 限定オファーやプロモーション

成功事例: ECサイト「ZOZOTOWN」は、購入プロセスを最適化し、ワンクリック購入機能や多様な決済方法を導入。さらに初回購入者向けのクーポン戦略を実施することで、2022年のカート放棄率を25%削減することに成功しました。

5. Share(共有)

購入後の体験を消費者が他者と共有する段階です。このステップは新たな消費者のAttentionを生み出す可能性があり、循環型のマーケティングサイクルを作る上で非常に重要です。

効果的な施策例:

  • SNSでシェアしやすい体験の創出
  • ユーザー投稿を促すハッシュタグキャンペーン
  • レビュー投稿特典プログラム

成功事例: カフェチェーン「スターバックス」は、季節限定ドリンクの視覚的なアピールを高め、「#スタバ新作」というハッシュタグキャンペーンを展開。2023年のキャンペーンでは、10万件以上のユーザー投稿を生み出し、それが新規顧客の来店動機となり、限定商品の売上が前年比30%増加する結果となりました。

AISASの各ステップは、必ずしも順序通りに進むわけではなく、消費者によっては一部をスキップしたり、繰り返したりすることもあります。例えば、友人のSNS投稿(Share)から商品を知り(Attention)、すぐに購入(Action)し、自分も体験を共有する(Share)というパターンもあります。

効果的なマーケティング戦略では、これらの各ステップを意識しながらも、消費者の多様な行動パターンに柔軟に対応できる総合的なアプローチが求められます。また、各ステップの効果測定と継続的な改善も重要なポイントとなります。

次のセクションでは、このAISASモデルと従来のAIDMAモデルの違いについて、より詳しく解説していきます。

AISASとAIDMAの違い

AISASとAIDMAは、どちらも消費者の購買行動プロセスを表したモデルですが、それぞれが生まれた時代背景や想定している消費者行動には大きな違いがあります。これらの違いを理解することで、現代のマーケティング環境において適切なアプローチを選択することができます。

基本構造の違い

AIDMA(アイドマ) は、「Attention(注意)」「Interest(興味)」「Desire(欲求)」「Memory(記憶)」「Action(行動)」の頭文字を取ったモデルです。このモデルは、消費者が商品を認知してから購入までのプロセスを直線的に捉えています。

一方、AISAS(アイサス) は、「Attention(注意)」「Interest(興味)」「Search(検索)」「Action(行動)」「Share(共有)」というプロセスで構成されています。

主な違いは以下の3点です:

  1. 「Desire(欲求)」と「Memory(記憶)」が「Search(検索)」に置き換わった: インターネットの普及により、消費者が能動的に情報を探し求める行動が重要になりました。消費者は単に欲求を抱いて記憶するだけでなく、実際に検索エンジンやSNSで情報収集するようになりました。
  2. 「Share(共有)」の追加: SNSの普及により、購入後の体験を共有する行動が一般化しました。この共有行動が他の消費者の購買行動に影響を与えるという循環的な構造がAISASの特徴です。
  3. プロセスの非直線性: AIDMAが基本的に直線的なプロセスを想定しているのに対し、AISASは必ずしも順序通りに進まない非直線的なプロセスを前提としています。

マーケティングアプローチの違い

両モデルの違いは、具体的なマーケティング施策にも反映されます:

ステップAIDMAのアプローチAISASのアプローチ認知段階マスメディア広告中心デジタル広告とマスメディアの組み合わせ興味段階詳細な製品情報提供インタラクティブなコンテンツ中間段階欲求喚起と記憶促進検索最適化とコンテンツマーケティング行動段階店舗での購買促進オンライン・オフライン両方での購買体験最適化追加段階なし共有を促進するSNS施策

実際の効果の違い

2021年に実施された日本の大手飲料メーカーの調査では、従来のAIDMAモデルに基づくキャンペーンと、AISASモデルに基づくキャンペーンの効果を比較しました。その結果、AISASモデルに基づくキャンペーンは:

  • 消費者エンゲージメント率が37%高い
  • 購入コンバージョン率が22%高い
  • リピート購入率が29%高い

といった数値が報告されています。特に若年層(18-34歳)においては、この差がさらに顕著で、SNSでの共有行動が新規顧客獲得に大きく貢献していることが示されました。

具体的な企業事例

従来のAIDMAモデル活用例: 大手自動車メーカーのトヨタは、新車発売時にテレビCMを中心とした大規模な広告キャンペーン(Attention)を展開し、ディーラーでのイベントや詳細なカタログで興味と欲求を喚起(Interest、Desire)、ブランドイメージを定着させ(Memory)、最終的に購入につなげる(Action)という手法を長年採用してきました。

AISASモデル活用例: 化粧品ブランドの「SHISEIDO」は、SNSインフルエンサーとのコラボレーション(Attention、Interest)、詳細な製品情報とユーザーレビューの充実(Search)、ECサイトの購入体験最適化(Action)、そしてハッシュタグキャンペーンによるユーザー投稿促進(Share)という総合的なデジタルマーケティング戦略を展開。2022年にはこのアプローチにより、新製品の売上が従来のアプローチと比較して42%増加するという結果を達成しています。

モデル選択の考え方

現代のマーケティングにおいては、AISASモデルがより現実の消費者行動を反映していると言えますが、業種や商品特性、ターゲット層によっては、AIDMAの考え方も依然として有効なケースがあります。例えば、高額な商品やサービス(住宅、高級車など)では、「欲求」と「記憶」のプロセスが依然として重要であり、両モデルの要素を組み合わせたハイブリッドなアプローチが効果的とされています。

最終的には、自社の商品やサービス、ターゲット顧客の特性を分析し、最適なモデルを選択または組み合わせることが重要です。デジタルとリアルの両方のタッチポイントを考慮した、総合的なカスタマージャーニー設計が現代のマーケティングには不可欠と言えるでしょう。

まとめ

AISASモデルは、デジタル時代における消費者行動の変化を反映した、現代のマーケティングに不可欠なフレームワークです。「Attention(注意)」「Interest(興味)」「Search(検索)」「Action(行動)」「Share(共有)」の5つのステップから構成され、特にインターネットの普及によって重要性が増した「検索」と「共有」の要素を組み込んだ点が大きな特徴となっています。

このモデルが2004年に電通によって提唱された背景には、インターネットやSNSの普及による消費者行動の劇的な変化がありました。従来のAIDMAモデルでは捉えきれなくなった、能動的な情報収集や、購入後の体験共有といった行動を取り入れることで、より現実的な消費者行動プロセスを表現することに成功しています。

AISASの各ステップには、それぞれ効果的なマーケティング施策があります:

  • Attention段階では、視覚的なインパクトのある広告やSNS広告などで注目を集める
  • Interest段階では、ストーリーテリングやパーソナライズされたコンテンツで興味を深める
  • Search段階では、SEO対策やコンテンツマーケティングで情報探索をサポートする
  • Action段階では、購入プロセスの最適化やプロモーションで行動を促進する
  • Share段階では、SNSでシェアしやすい体験やハッシュタグキャンペーンで共有を促す

AISASモデルと従来のAIDMAモデルの主な違いは、「Desire(欲求)」と「Memory(記憶)」が「Search(検索)」に置き換わり、「Share(共有)」が追加された点です。また、AISASでは消費者行動の非直線性を前提としている点も大きな違いです。実際の効果測定においても、AISASモデルに基づくアプローチは、特にデジタル環境においてより高いエンゲージメント率や購入コンバージョン率を実現しています。

現代のマーケティングでは、業種や商品特性、ターゲット層に応じて、AISASモデルを基本としながらも、状況に応じてAIDMAの要素も取り入れるなど、柔軟なアプローチが求められます。特に、デジタルとリアルの両方のタッチポイントを考慮した総合的なカスタマージャーニー設計が重要です。

AISASモデルを理解し活用することで、企業は消費者の行動パターンに即した効果的なマーケティング戦略を構築することができます。特に「Search」と「Share」の段階を重視し、消費者が能動的に情報を探し、体験を共有するプロセスをサポートすることが、デジタル時代のマーケティング成功の鍵と言えるでしょう。

  • この記事を書いた人

田中諒

10年以上に渡りSEOを生業としてきました。2019年からフリーランスとして活動開始中。編集者・コンテンツディレクターとしても活動しており、多くのWeb媒体でコンテンツ制作に関わる。

-ブログ, マーケティング